高木君は壁からパッと手を離した。

「なんでもない。忘れて」

えーと……あ!!

「そうだね。高木君、今の予行練習みたいなのだよね?」

「え?」

私の言葉に高木君が顔を上げる。

「好きな子にする予行練習。
でもこういうのはダメだよ?
見られたら誤解されちゃうもん」

「あ、う、うん…そう…だね」

「うんっ。ボトル、いく?」

「…いや、いいよ。
俺が運ぶから」

「そう…?…わかった。じゃあ私は帰るね」

「…うん。また明日」

「うんっ!またね!」

私はそう言うとタッタッタ…と走ってその場から離れる。

…なんだったんだろ。

高木君…あの目、なんか本気だった…よね。

誤魔化しちゃって気まずくて逃げて来ちゃったけど…

まあ気の迷いってやつかな。

私は教室に鞄を忘れたことを思い出し

一度教室に戻ってから学校を出た。