「…結芽、さっきのことは忘れろ」

「うん…」

そう返事はしたけど、やっぱり忘れられるはずない。

風雅もわかって言ってる。

だけど…なにも、なにもなかったよ。

再び歩き出す私たち。

もちろん会話なんてない。

だけど、さっきも今も私が取り乱さなかったのは…風雅がしっかり手を繋いでいてくれたから。

ドキドキドキドキ…

こんなときなのに鼓動が速くてそんな自分に少し呆れる。

でもいつもとは違ってそのドキドキを隠そうとも、恥ずかしいとも思わない。

今だけは、そのドキドキが心地よかった。