土方さんのにおい袋が
総司さんの枕元にあった
縁側で総司さんとうちのことを
雪と話してたもんね
うちは、雪の記憶が怖いから、他の人格と違い拒否してる
せやのに……
こないな記憶は共有してしまう
雪之介を復活させたのが、間違いか
うちがおるんが、間違いか
うちやんなぁー
女では、やっぱり生きてられへんのや
屯所を出て、どこを目指すわけでもなく
歩き出す
後ろから、足音……
振り返ると土方さん…
失恋したとはいえ、土方さんが追い掛けてくれたことが、素直に嬉しかった
笑おう
笑った顔を
土方さんの心に残してもらえたら
それでいい
もうセツになるんはやめや
最後くらい笑わな!
でも…
ウサギを土方さんに渡してすぐ
急に目の前がチカッとした……
慌てて土方さんに背を向ける
鼻に手を当てる
鼻血……
バレる訳にはいかない
一方的に別れを告げ、土方さんをまいた
屋根上で仰向けに寝て空を見た
鼻からは、あいかわらず血が出るけど
涙は、でなかった
全部消える
誰の記憶にも残らない
鼻血が止まる頃には、すっかり夜だった
宗次郎くんの記憶にも残らなかった
土方さんのにおい袋を月に掲げる
優香もセツも残らない
もう、月を見るのはやめよう