《佐渡妃茉里 seed》
「ちょっと、まって!」
突然に言われたことに私は動揺する心を隠せなかった。
転校なんてしらないよ…
第一私は、人見知りで結衣ちゃん以外まともに喋ることが出来ないのに。
「結衣ちゃんはどうするの?
折角、同じ高校に行けるって話だったのに。」
そう言うと、
「お別れするしかないわね、結衣ちゃんには申し訳ないけど、もう決まったことなの。」
とお母さんからはあっさり返事が帰ってきた。
結衣ちゃんにはなんて言えば?…
絶対、怒るよね。同じ高校に行くって約束したんだもん。
「はぁ。」
そう思いながらも、重い足取りで結衣ちゃんの家に向かった。
結衣ちゃんっていうのは、私の幼なじみで唯一の私が喋ることができる友達である。
元気な性格で物をはっきり言う、私の憧れの存在でもあった。
でも、そんな結衣ちゃんに転校する なんて言えるのかな…
トボトボと慣れた道を歩いていく。
「ついた。」
緊張した様子をなるべく隠して息を整える。
そして、手汗いっぱいの手で、インターホンを押す。
ピンポーン
『はい?どちら様で って妃茉里~!
どうしたの??』
結衣ちゃんが出た。
「あ、ちょっと、伝えたいことがあってさ…」
『ふーん?、わかった、今行くね!』
「うん。」
少しの会話をしただけなのに、私の心臓はドキドキしていた。
どうしよ、緊張してきた…
ガチャと、音がして結衣ちゃんが出てくると、「どうぞ!入って。親いないし♪」
なんて言って、私を部屋の中に入れてくれた。
あ、結衣ちゃんの匂い…
この匂いを嗅げるのも今日で最後か。
結衣ちゃんと会話をしながら階段を上って、部屋に入る。
結衣ちゃんの部屋は相変わらず、白で統一されていた。
「で、話ってなに??」
「えっとね、すごく大事な話だから、ちゃんと聞いて欲しいの…」
自分でも声が震えているのがわかった。
だけど、ちゃんと言わなきゃ。
よし
決心して結衣ちゃんの目を真っ直ぐ見る。
そして、
「私、転校することになったんだ。」
結衣ちゃんに事実を突きつけた。