「……そんな」


私は、目の前に広がる光景にショックを隠しきれなかった。


数時間後に目覚めた先輩は少し元気を取り戻し、そこからさらに数時間をかけて、私達は命辛々目的地である浦高橋の見える場所にたどり着いていた。


だけど、そこは……。まるで生者を拒んでいるかのような、再びの地獄だった。


広い橋の登り口に装甲車や鉄柵でバリケードを作り、銃を乱射する自衛隊。


そこへ吸い寄せられる無数のゾンビの群。


さらには、その間で強引にバリケードの突破を謀る人々。


どうしてそうなったのかは、しばらく眺めていておおよその想像がついた。


バリケードの向こうへは、歩道からしか通行ができなくされ、その歩道では自衛隊員が町から出る人のボディチェックを行っている。噛まれていないかを調べているのだ。


しかし、それが一人一人行われるため遅々として進まないのだ。


人々は行列を作り、そこへゾンビが現れ自衛隊が発砲。その音で近くにいたゾンビが引き寄せられ、また発砲。


そしてだんだんと収集がつかなくなってきたのだ。


最悪なのは、それでも自衛隊は人々を一気に通すことはせず、歩道からのみ通している。


浦高市民を犠牲にしてでも、ゾンビを浦高市から出さないつもりだ。


これ以上、ゾンビの被害を拡大させないための苦肉の策だろうが、あまりにも非道い光景だった。


群衆は次第に暴徒と化し、後ろから迫るゾンビではなく、自衛隊に向かって拳を振り上げ始めていた。