「そ、そーちょー!」
「今度はなんだよ」
切れ気味に振り返ると、見知った男が立っていた。
「青井さんが来てるんですけど…」
「やほー、綿」
「…なんでいんだよ」
理由を、頭をフル回転させて考えてみた。思い当たるのは一つだけ。
見回りの件に不満か、明恋みたいな理由でも報告しにきたのか…
「問題か?」
小さく呟く。
奈波は凄く真面目…というか、女遊びは激しいけど、族のことは何よりも最優先にしている。
暴走があった日、彼女と別れた、なんて話を聞いたことがある。
だからそういう話じゃないはずだ。
「どうしたんだ、奈波」
部屋の入り口まで歩いていくと、ニコリと笑みを向けられた。
…女をオトすときの方法だろうか。
いや、それを自分に向けてやる意味だよな。
「大した用でもないんだけど」
悩むように、腕を組む奈波。
大した用か否かを決めるのは、どっちかというと、こっちじゃないだろうか。