西麟は比較的にいじる側の人間が多い。
だから、誰かが弄られることは少なく、他に比べれば平和だと思う。
「デートかぁ…」
いそいそと用意を始めた奴らを見ながら、西麟内では滅多に聞かない言葉を呟く。
「徹底的に潰してやろうかな」なんて言葉が聞こえて、「あんまいじめてやるな」と注意する。
何人目だっただろうか。明恋のそれらしき彼女は。
ここにそれを知っている奴らがいるか…
慌ただしく走る様子をみて、それを誰かに問い詰めるのはやめておいた。
──いいか、その内わかるだろうし。
「居場所特定かんりょーって感じ?」
誰だチャラ男。
パソコンに向かい合って眼鏡を掛けていたのは、明恋の居場所を調べるためだったらしい。
いつもは掛けていないから、仕事用眼鏡ってところか…
「どこ」
「あ、そーちょー」
ここっす、と指し示した画面上のそこは、明らかに定番のデートスポットで。
西麟には、縁もゆかりもない。
「うわ…恋愛スポットという名の地獄」
画面を覗いて「うぇ…」と顔をしかめたドS野郎第一号の紫苑(しおん)。