これみんなに伝えるつもりで話しているんだけど…。聞いてなかったらそれまでかな。
同じことを何回も繰り返し言えるほど、気は長くないつもり。
「綿、俺…」
「忙しい、でしょ。わかってるよ。みんなで回せばなんとかなるし」
「ありがと」
ニコッと笑みを浮かべて、自由気ままな黒猫のように、何処かへと消えていった。
正確には、倉庫から出て行った。
忙しい奴だな。
「明恋がどこに行ったかわかる奴」
今倉庫にいる10人くらいにそう尋ねると、迷った挙げ句に1人が挙手した。
いつから挙手制になった…
「じゃー信(しん)」
「あ、はい。えっと……この前聞いた話だと、女の人と会うらしいです」
信は総長になら副総長のことを売る、と。
これはそのうちに使えるかもしれない。
それよりも今大事なのは、明恋がデートを満喫中ってことだ。
「追っかけます?」
良いことを思いついた、とでも言うように、ニヤリと笑ったとあるドS野郎。
「行くなら4.5人にしとけ。あんまり多いと悪目立ちする」
意地悪い笑みを浮かべてそう言えば、数名がニヤリと笑った。