「シエラちゃん……?
 無事だったの?」

 万桜は、そう言って緑色のフェアリー。
 エレメント・ノームに向かって尋ねた。
 万桜の問いにシエラはうなずく。

「うん……
 焔と奈良の若草山で、フェアリーの模擬訓練を受けていたから私たちは無事だったの」

「そう……
 よかった」

「シエラ、お前そいつと知り合いなのか?」

 バルドが、そう言ってシエラに尋ねる。

「はい。
 私のクラスメイトです」

「そうか……
 すまないな、疑ってしまって」

 バルドが、そう言って謝った。

「いえ、気にしないでください」

 万桜が、そういうとシエラが声を出す。

「テルヲや玉藻ちゃんも学校にいたはずなんだけど無事かどうか知ってる?
 何度も携帯に連絡をしているんだけど連絡が来なくて……」

 そう言ってシエラの表情が曇る。
 万桜は、言いにくそうに言葉を放った。

「テルヲくんも玉藻ちゃんも無事だったみたいだけど……
 テルヲくんの様子がおかしかったの……」

「おかしいって?」

「わからない……
 テルヲくんは、『天使の帰る場所に行く』って言ってた」

「どこだそれ?」

 その言葉とともに赤いマントに薄水色の装甲のフェアリーが現れる。
 その機体、フェアリー・ソウル。
 それに乗っているのは馬神 焔だ。

「天使の帰る場所。
 それは、神に仕える場所。
 天使の楽園。
 人類の敵の巣窟だな」

 バルドが、そう言うと焔が目を丸くさせる。

「天使って敵だろう?
 なんで、そんなヤツらのところにテルヲが……」

「テルヲってヤツがどういう奴なのかわからないからなんとも言えないが……
 次会うとき、敵になっている可能性が高いな」

 バルドが、そう言って再び鉄球を召喚した。

「バルドさん?」

 シエラが、不思議そうにバルドの方を見た。
 万桜も同じように構える。

「万桜と言ったな。
 ここは、俺とバネッサに任せろ」

 バルドが、そう言うと万桜が尋ねる。

「バネッサ?」

「俺の愛機の名前だ。
 よろしくな」

「はい、でもこの数……
 バルドさんだけではきつくないですか?」

 万桜が、そこまで言いかけると空中からタマゴが数十個降ってきた。

「大丈夫。
 お前らは、パンドラ艦へ迎え。
 シエラ、焔。
 万桜をパンドラ感へ案内してやってくれ」

「わかった!」

 焔は、そう言って返事する。

「本気なの?
 相手は――」

「大丈夫!教官は強いから!」

 焔が、そう言って笑った。

「私たちがいるほうが返って邪魔になるわ」

 シエラが、そう言ってバルドに背中を向けた。

「わかった……
 バルドさん、ご武運を祈ります」

 万桜が、そう言うとシエラと焔のあとについてその場を離れた。