「ひ、必殺の一撃を繰り出しやがって…くそ〜。お前もこの歳になって1人身だった時に分かるさ…」


余程ダメージを受けたのか、河村の握った拳がフルフルと震えていた。

彼は悪い顔という訳ではない。

性格も女好きを除けば、結構頼りになる大人の男だ。

けれど、裕一郎は敢えて口に出しては言わない。

言えば調子に乗る性格だと分かっているからだ。


「こ、この話はまた今度だ。…で、裕はその人物と会って話したのか?」

「ううん…まだ。だって殆ど話した事ないし」

「はぁ?」


さっきから部下の言葉が突拍子もなくて、河村の頭は混乱するばかりである。


「殆ど話した事もないって事は、ひょっとして面識もないって事じゃないのか」

「オレは津久見さんの事、よく知ってるんだけどね」

「だけどねって…お前」


河村はあっけらかんと答える裕一郎に呆れて言葉を失う。

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