「あの…盛り上がってるとこ悪いんですけど、オレ、一言も女性なんて言ってないし」


「そうか…女の子じゃない…えっ!?」


「津久見さんは23歳、成人男性だよ」

裕一郎はガラガラと夢が音を立てて崩れていく様が手に取るように分かる河村に苦笑した。

「何だ…男なのか」

「でも凄くいい雰囲気を持った人なんだ。久司も会ったら、絶対そう思うって」


裕一郎が嬉しそうに笑って言うと、河村からふざけた表情が消えた。


「ふーん。で、そのツクミって人は式神系、闇系…それとも補助系か?」

「うーん…以前、人鬼の目を持ってたから…依り系ってとこじゃないかな」

「人鬼って…鬼の目持ちか、珍しいな。お前どこでそんな人間と知り合ったんだ?俺でさえ、人の噂で聞いた事しかないっていうのに…」


さすがに長く霊障関係の仕事をしてきた河村でも、鬼絡みの依頼は受けた経験がない。


「ちょっとね、ある人を通じて」

裕一郎は曖昧に答えた。

「でも何でよりによって選んだパートナーが依り系なんだ?お前は闇系なんだから、必要なのは補助…もしくは式神系だろ」

「それは久司がいるからいらないよ」

「呼び捨てにするなって言ってるだろーが…ったく。それにしたって、お前の考えは理解できんな」

河村は首を横に振る。

「オレには久司がどうしてそんなに女の人に飢えてるかの方が分からないけどね…あれ、どうしたんだよ?」

急にガクリとうなだれた彼に、裕一郎は下から顔を覗き込み尋ねた。
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