「しかし、一体何が不満なのかねぇ…人間のパートナーなら、優秀な人物がここにいるってのにさ」

河村は自分を指差した。

「久司はオレの仕事のボスであって、パートナーじゃないから…」

「ふぅぅぅ、可愛くないなぁ…散々人の事バカにしといて、そんな時だけボス扱いか?せ〜っかく、こき使ってあげようと思ったのにぃ〜」

「語尾延ばすの止めてくれよ、気持ち悪…また吐いてしまいそう…」


裕一郎はブルリと身震いをした。


「うわぁ…失礼だな、祐は。大人に対する礼儀ってヤツを、俺はお前がガキの頃から厳しく教えてきたつもりだったんだが、まだ足りないみたいだな」

机の上に頬杖をついた河村は、ニヤニヤと意地の悪い笑みを浮かべて裕一郎を見る。

「冗談。いい加減な久司に育てられた割に、オレはまともだよ。………大体さ、オレはもう今の段階で十分こき使われてると思うんですけど」

「あれ、気づいてた?」

ふざけた口調で言うと、39歳独身男は豪快に笑ったのだった。


      プロローグ【完】

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