分からなかったノックの音源は、あたしの部屋の縦に長い窓ガラス。


 透明なガラス一枚の壁の向こうにノックをしてきた誰かがいる。




 ちょ、まだノックしてるんですけど……!


 なに、家の中に入りたいの?



 っていうかここ三階だよ!? どうやってベランダに入ってきたの!?




 ど、泥棒……!? いやまさか。


 でも、どう考えてもこの状況は危険だ。



 怖いので窓の方を見ずに首を捻ったまま、滑らかに動く椅子から退き、走って勢い良くドアを開いたままで部屋を出た。




「ちょ、ちょっと行かないでください﹏﹏!」




 後ろからあたしにかけられた困ったような、少女の声。


 それで止まるわけもなく、声を振り払って玄関へ走り込む。




 小さく「すいません!」と謝る声が聞こえるとパリン、とガラスが割れるような冷たい音がした。



 な、窓割ったのっ!?