美佳はそれ以上…何も言えなくなった。

止まらない涙が、悔しかった。

片桐に、涙なんて見せるつもりはなかったのに…。

美佳は涙を拭いながら、片桐の前から駆け出した。

立ち尽くす片桐の横を通り、ドアを開けて、階段をかけ下りた。

そして、一番近くのトイレに飛び込むと、美佳は泣いた。

土曜日の為、誰もいないのが幸いした。


声を出して、泣く美佳に気づく者は…誰もいなかった。

次のステージが始まるまで、涙はすべて流さなくてはならない。

そうしないと、太一の後ろで叩けない。

彼は自分ではなく、前に向かって歌うのだから。