その頃、渡り廊下を出た俺は視聴覚室に向かっていた。


片桐と美佳が、二人で出たことを俺はまだ知らない。


俺は視聴覚室の扉を開け、中を見た。

俺が参加するバンドの一組前であるメタルバンドが、演奏していた。

耳をつんざく爆音に、一瞬顔をしかめ、観客を確認したけど…片桐はいない。

「あれ?トイレかな?」

俺は扉を閉めると、控え室となっている隣の空き教室に入った。

「おはようございます」

次の出番の準備をしているバンドのメンバーに挨拶したけど…美佳がいない。

「あれ?」

俺はその時も、二人がいっしょにいるとは考えなかった。

美佳と片桐。

同じクラスではあるけど、彼女達が話すことはないと思っていた。