「橘!結構良かったぞ」


最前列に座る正利が、ステージを降り近づいてくる美佳に声をかけたが、

思い詰めたような表情をした美佳には聞こえなかったようだ。

そのまま横を通り過ぎた美佳に、正利は首を傾げながら目で追った。

「なんだ?」

正利の隣に座る総司も、心配そうに目で美佳を追った。



席についた片桐の横に、美佳が立った。

「か、片桐さん…」

何とか絞り出したような声に、片桐は驚き、

「はい?」

美佳の顔を見た。

真剣な表情と、真剣な眼差しが、片桐を射ぬいていた。

片桐は少し…首を傾げた。

美佳はしばらく…片桐を見つめた後、おもむろに口を開いた。

「少し…話があるの」