ゆっくりと俺から離れると、片桐は笑顔を向けたまま、俺に敬礼した。

「少年の健闘を祈る」

と言うと、片桐は手を振りながら、俺に背中を向け、一足お先に視聴覚室に向かった。


片桐の唇が触れた頬に手を当てながら、俺は渡り廊下から離れていく…片桐の後ろ姿をぼおっと見送った。



「いくか!」

しばらくして、はっとした俺はゆっくりと頬から手を離すと、思い切り背伸びをして、歩き出した。

もう緊張はない。

あるのは、片桐に対しての思いだけだ。

あとは…それを歌に乗せるだけ。

君に向けて。