「太一!お前の練習は、ここまでだ。明日も、同じことをするからな」

喉が枯れた俺を押し退けるように、ベースの綾瀬がマイクスタンドの前に立った。

これから、彼女らだけの練習となる。

当然だ。

彼女達は、一曲で終わるはずがない。

次の曲が始まる前に、邪魔な俺はスタジオから出た。


ふらふらになりながら、部室を出た俺は…途中、廊下の壁に手を当てて、休んだ。

頭がガンガンした。まだ、音が耳の奥にこもっている。

「歌うことが…こんなに疲れるとは…」

音の塊を全身で感じ、そのプレッシャーに圧倒された。

特に、ドラム。

真後ろから、背中を切り裂くような鋭い音を浴びせられていた。

「ジョリーって…あんな曲だったか…」

俺は後ろから、殺気に似たものをつねに感じていた。