「ライブ?」

びっくりする片桐に、静かに頷くと、

「一曲だけだけど…人前で歌う。でも、その歌は…片桐1人だけに向けて、歌うから」


と言ってから、俺ははっとした。

(なんか…重かったか…。それともキザか…。お前の為だけなんて…)

俺は心の中で、頭を抱え、

(ひ、引かれてないか)


勇気を振り絞って、片桐を見ると、

彼女はまた手摺にもたれていた。

そして、遠く見ながら…呟くように言った。

「あの曲は…悲しい曲よ」


俺は、息が詰まりそうになった。

そんな悲しい曲を、あたしの為に歌うの?

彼女の横顔が、そう言っていた。



だから!

俺は叫んだ。


「例え、悲しい曲だとしても!俺が幸せにしてみせる!」