片桐は手摺から離れると、歩き出した。

俺の前を通り過ぎる時、

「そんな曲が…好きなんだ」

呟くように言った。


俺ははっとして、手摺にもたれるのをやめた。

そして、片桐の背中に叫んだ。

「お、俺は!悲しい曲だとは思わない!幸せに一番近い曲だと思ってる!」

俺の声に、片桐は足を止め、振り返った。

「この曲の歌詞と、背景を知ってる?それを知ったら…」

「そんなこと関係ないだろ!俺は歌詞の内容も、背景も知らないよ!だって、英語がわからないから!だけど!」

俺の言葉は止まらない。

「俺は、この曲が好きだ!この曲で、幸せな気分になれた!だから、俺にとっては…幸せにさせる曲なんだ!」