「お、終わった…!!!」


およそ30分かけてのタイピング。

私はパソコンが苦手である。



「じゃ、じゃあプリントして…」


プリントってどうやるのかな。


多分こう…ここをクリック…で、あ、できた。


「ほー、出て来た出て来た。」

これをコピー機で3枚増刷。


んで、ラックの中の鍵とって、



「文化祭実行委員会にお知らせします。この後16:30から会議を行います。至急、会議室に集まってください。」


簡易放送、バッチリ!!!!



会議室は南校舎の二階の東の端っこ。

ちなみに執務室は北校舎二階東端。

ちょっと走るだけだからすぐに着く!



「鍵開けて、皆を待って、それでプリント配って、」


解錠。




1面真っ白なこの部屋。色があるといったら机の側面やホワイトボード用のマーカーくらい。


荷物を置いて、


「荷物執務室だ!!!」


急いで執務室に行かなきゃ!


今日は吹奏楽部は休みなのか、どこからも音が聞こえない校舎は自分の足音と他の実行委員会の足音だけが響いていた。






私が会議室に戻った時には全員揃っていた。

「えー、この度実行委員長となりました。白島絵空です!よろしくお願いします!!」



メンバーは、


クールな印象の黒髪イケメン、石川光正さん。3年生。

ファンシーなフインキの不思議ちゃん、有栖未夢ちゃん。1年生。

明るいけどどこか影のあるイマドキ女子、小川みのりさん。2年生。


この3人がこの文化祭を支えるメンバーである。



「まず、仕事の説明をします!配布したプリントをみてください。」


「え、多いな…遊ぶ時間とかなさそ。」

「委員長、これ全部未夢達がやるんですか!?」

「はい、一応生徒会に応援を頼んだんですけど、皆さん忙しいみたいで…私達で一ヶ月の間にやり遂げるしかないです」

「とはいえ、俺たちも暇じゃないぞ。特に小川はチア部の部長だし、全国大会も近いから練習を抜けれるのは週に2回程度。休日も合宿が来週末、だったか?」

「はい。だからごめん絵空。休日は多分どっちかしか抜けれない…平日はなるべく行くようにするから!!」

「大丈夫です!!気にしないで!」

「俺はバスケ部で、一応全国レベルのチームだから、抜けたら何言われるかわからない。なるべく行くようにするが…週に何回っていう特定は無理だと思う。」

「わかりました。仕方ないです。」

「未夢は美術部だから基本暇なので!仕事どんどん押し付けてください!イラストの仕事あったらすぐ言ってくださいね!あと、未夢タイピングとかも得意な方なので!」

「助かります!!」

すごい個性的なメンバーだけど、それなりに楽しんでできそう…!




「では今日はここまでにします!おつかれさまでした!各自仕事か部活についてください!」

「はーい!」



「あの、未夢ちゃん、早速仕事良いかな?」

「良いですよ!どんとこいです!」

「ポスターの仕事なんだけど、ポスター書いてくれない?」

「了解です!!任せてください!明日には完成させますから!」

「ありがとうございます!」










肩が痛い。


流石に打ったり消したりは辛いな…目にも良くない。

パンフレット作りも楽じゃない…



結局みのりさんも石川さんも部活行っちゃったし、執務室にいるのは真剣な表情でPCを見つめては右手に握ったペンタブ?ってやつを動かしまくってる。


「あの、委員長。」

「…へっ?あっ、ごめんなさい、何ですか?」

「未夢、今日はバイトあるので失礼します!」

「バイト!?何やってるの?」

「知り合いにヘアスタイリストさんがいて、その方のモデルやってるんです。」

「モデル!?すごーい!!頑張ってください!」

「ありがとうございます!絵は下書きできたので、今日バイト終わったらまた家でやります!」

「わかりました!おつかれさまでした!」

「おつかれさまでした!!」




とうとうぼっちか。

更に静まる執務室。

そろそろ暗くなってきて、パソコンの明かりが眩しい。








イキナリまわりが明るくなった。


「随分遅くまでやってるのね。絵空。」

「美佑里!まだ残ってたの?」

「今部活終わったの、補習みたいな言い方しないでよ。」

「ごめんごめん!今から帰るの?」

「そのつもり、絵空の方は?」

「もう帰ろうかと思ってた!一緒に帰ろう!」

「うん、良いよ。待ってるから終わらしな。」

「ありがと!すぐ終わるから!」



急いでPCをシャットダウンさせ、電気を消した執務室を施錠し、もうすっかり暗くなってしまった校内階段を美佑里とお喋りしながら降りて行った。