奏汰に腕を引かれ、タクシーに乗り込んだ。
行き先は私のお家。


タクシーの中は沈黙。

私は少し頭が痛く、
意識が朦朧としていたが
握られた手だけは熱く火照っていた。


「悠さん。つきました。」

「ん、にゃ、あり、と、」

とぼとぼと落ちていく言葉は
驚くほど覇気がない。


階段を上り、鍵を開けると
奏汰は抑えていたものを出すように
私をベッドに押し倒した。


「ふえっ!?」

「なんで振られたとか、勝手に」

少し篭った声は泣いているようにも聞こえた。

「俺がどんな気持ちであの言葉言ったかわかります?ていうか、あの言葉の意味、わかってます?勝手に被害妄想して、あんな顔されて、俺、なんか悪いことしたんかとか色々、考えたじゃないですか」


奏汰は怒るとよく喋る。
たまに羨ましくなる。


…と、こんなこと考えてる暇ないのに、なんて返したらいいかわからない。

言いたいことは山ほどある。
でも頭が回らない。
なんて言ったらいいかわからない。
なんて言えば正しい?

わからない。


「ごめんなさい」

考えた末に振り絞った言葉はそれだけだった。

すると奏汰は深くため息をついて
私を抱きしめた。


「俺は悠さんの気持ちがわからないって言ったのは、嫌いになったわけでもなく、別れたかったわけでもない。

ただ、
なんでプレゼント喜んでくれんかったの?」


泣きそうな奏汰は呟いた。