目をごしごしと制服の袖で拭って、また浮かんでいた涙を拭いた村山。まだ少し充血しているけど、その目は力強いものだった。



「まあ、逃げてたって何もならないんだから、頑張るよ」


「...ああ、頑張れ」



強いな、と思った。

俺もいつか、自分の想いを伝える時が来て、その時は、こんな風に強くいられるだろうか。見当もつかない。でも、身近なものだから。


...それにしても。



「なんで、俺に話してくれたんだ?」



今まで部活以外ではあまり話さず、浅い関係の俺に、どうしてそんなことを話してくれたのか。

訊くと、彼女は少し考えて、答えた。



「...似てるから、かな」


「似てる、?」



怪訝な顔をすると、村山はくすりと笑った。




「そう。...だって桐山、あたしと同じような恋してるでしょ」