「さっき部室覗いたら、まあわかると思うけど部長がいてね。一瞬固まっちゃったけど、気まずいままなんて嫌だから入ろうとしたんだけど、」
やっぱり、部長がいたのか。
でも、部長がいて気まずくて、ドアを開けられなかったのだと思っていた。でも、どうやらまた別に理由があるようで。
なんだろう、と続きを待つ。
「声掛けようとしたら、部長が笑ってて。誰かといるんだって思って見たら、部長の隣、坂田先輩がいたの」
「坂田先輩?」
「...たぶん、部長の好きな人」
...え。
部長の好きな人が、坂田先輩?
「実際に部長の口から聞いたわけじゃないど、でも見ていたらわかるの。実際、好きな人がいるからって言ってフラれたからね」
好きな人が、誰を想っているのか。
好きになったからこそ、気づいたんだろう。それで、逃げてしまった。でもそれは、きっと自然なことで、好きだって証で。どれだけ辛いだなんて俺には到底計れないけれど。
他人事だとは思えない、のだ。