部室から離れて、村山に着いて行ったところは、屋上へ向かう階段だった。その隅に腰かけて、思う。
...この場所、鈴森先輩が変な3年の野郎に襲われかけた場所だ。
人通り少ないし、告白とか、誰にも聞かれたくない話などしたいときにはうってつけだ。知らない人の方が多いから、今もこうしてここに来れる。
暫く顔を下に向けていた村山が、話し出す。
「...さっきはいきなりあんなことしてごめんね。ちょっと取り乱しちゃって」
「いや、いいよ」
「......あの、ね」
俺はずっと村山に目を向けていた。でも、目が合うことはない。彼女はずっと、今も下を向いているままだ。
それでも、何かを伝えようとするその声に、耳を傾けた。
「いきなり、なんだけど...」
言うのを躊躇っていて、なかなか言い出せない様子だった。
「うん」
落ち着けるように、ただ相槌を打つ。
すると、深呼吸する音が聞こえて、次に聞こえた言葉は。
「...あ、あたし、仁科先輩のこと好きなの」