俺のことを呼んでる人?
「誰?」
「え...あ、あそこのドアの...」
指をさされたその先にいた人。それは確かに俺の知る人物で。
「駿、ちょっと行ってくるわ」
「おー」
ガタン、と音を立てて椅子から立ち上がる。
俺に伝えてくれた女子生徒に礼を言い、ドアへと向かう。
俺が近づくと、キョロキョロと落ち着きなく立っていたその人は、酷く安心したような表情を見せた。
「何?...村山」
俺を呼び出した人。
村山琴音。俺と同じ美術部の、そして2人しかいない1年部員のひとりだ。
村山は眉を下げて、困ったように笑った。