ひとりの帰り道は、自然と速足になってしまう。他に誰もいないからだろうか、いつもより速く歩いていた。


それにまだちょっと、怖かったし。



昼間のことを思い出したら、なんともいえない感覚に包まれて、もつすぐ夏が来るのに身震いしてしまいそうだ。

それと同時に、どうしてか。


桐山くんの顔も浮かぶ。



あれ以来、自分が彼のことを意識してしまっているのはたわたしがいちばん解ってる。ほんの数分のことだったのに、なんか、彼の見方が変わってしまったような。


わたしの中の"桐山泰生"という存在は、確かに立ち位置を変えた。



でもまだわからないから。




頭を振って考えるのをやめて、速歩きで駅へと向かった。