ふと絵を描く手を止めて、時間を確認する。時計の針は、あと少しで最終下校の時刻を指している。



...うわ、もうこんな時間。



前に桐山くんが、絵を描いていると時間を忘れてしまうと言っていたけど、本当にその通りだと思う。わたしも集中したら周りが視界に入らなくなる。



急いで画材を片づける。筆なんかは特に洗わなかったら駄目になってしまう。


部員はみんな、既に帰り支度をしていた。

全員いないし、もう帰った人もいる。急がなくちゃ。



わたわたと手洗い場へ向かうとき、なぜかばっちりと、教室を出ていく桐山くんと目が合った。


予想外の出来事に、少し動揺する。



「...、桐山くん、ばいばい!」



これ以外に言う言葉が見つからず、両手は塞がっているので聞こえるようにそう叫んだ。

彼は少し驚いたようすで、軽く頭を下げた。



そして、ちょっと暗くなった廊下を歩いて行った。