「そうだったんだ...」



あそこにいたのは、偶然。その偶然がなければ今頃わたしは。

もし次、あの人に会ってしまったらどうしよう。生徒なのは間違いないんだから、会うかもしれない。そうなったら、どうしたら。


...考えたくない。



「...って、その友達は?大丈夫なの?約束してたんじゃ、」


「ああ、大丈夫ですよ。たぶん」


「たぶんって...」


「あの場ではああするのが正しかったんですよ、きっと。それより早く食べないと、もう時間ないですよ」



はっと時計を見れば、残り3分程度。

桐山くんは食べ終わり、その体はわたしの方を向いている。


急いで残っている焼きそばパンを胃に押し込んだ。桐山くんがずっとこっちを見てるから、なんか食べにくかった。



教室へも、2年の廊下だというのに、彼は気にせずわたしを教室まで送り届けてくれた。またあいつが現れたら危ないから、って言って。



教室について、また部活で、と言って去っていく桐山くんの背中を、ずっと眺めていた。