さっきまでわたし、襲われそうになってたんだ。一瞬だけ忘れてたよ。忘れられるようなことじゃないのに、おかしいなあ。



桐山くんがわたしの腕を引き、走るそのスピードに合わせて、足を動かす。



数分止まらずに走りきって、ようやくさっきの校舎とは反対の校舎の階段へと辿り着く。全速力で階段を下りて走ったもんだから、文化部のわたしには十分な運動で。息切れして、胸に手を当てて呼吸を整える。


桐山くんはそこまで息切れしてはいなかった。




「...ここまで来れば大丈夫ですよね」


「ん...たぶん。ほんとありがとう。助かった」




改めて目を見つめてお礼を告げるた。彼は恥ずかしいのか、小さく頭を縦に振ってそっぽを向いた。




「そういえば先輩、お昼ってどうするんですか?」


「え、あ...」