「...ごめんなさい」



言われ慣れてしまった言葉。本来ならきっともっと高揚するはずなのに、どうしてこう思えてしまうのだろうか。わたしは周りの人たちが思うほど、自分の性格が良いとは思えない。


今だってほら、気持ちを伝えてくれたのに、早く帰りたいだなんて思ってる。



「...どうして?」



傷ついたような顔で、そう尋ねられる。

自分の気持ちを正直に伝えるだけで、相手を傷つけてしまうんだな。



「あなたのこと知らないから」



その、正直な答え。

口にすると、一瞬にしてその人の顔が変わった。



彼は目を剥き出しにして、ものすごい勢いでこちらへ近づいてくる。わたしは反射的に後退りするも後ろは壁で、左側には階段。うまく歩けなくて、一気にわたしの心は恐怖で埋め尽くされた。



「...っ!」



壁とその人に挟まれるように、押し付けられた。