暗い表情のわたしに、慶哉は軽快に笑った。その声に驚いて、目線を上へと上げた。



「別にお前が気にすることじゃないよ。どうせ、俺が睨まれてんのに責任感か何か感じてんだろー?いつも気にしてる素振りしてたもんな」



...当たってる。

今までもずっと気にしてた。それも全部、気づいてたんだ。



「話すのは駄目だなんて決まりねぇだろ。羨ましいなら喋ればいいだけなのに、へたれが多いからな」


「ちょ...聞こえるよ」


「わざとだよ。だからお前も、誰と話したっていいんだよ」



誰と話したって、いい。

当たり前のことなのに、当たり前になっていなかった。



「...そう、だよね。ありがとう」


「おう。...で、本題」


「え」


「"昼休み、屋上前の階段に来てください"だとさ」


「..........」



手のひらに1枚、小さなメモ用紙が乗せられた。男子って感じの字で、慶哉が言ったことがそのまま書かれていた。



「...承知しました...」



苦笑いのわたしに、慶哉もまた、苦笑した。