保健室に着いて、両手が塞がっているためなんとか足でこじ開けようと試みた。しかし、そんな俺の行動に気がついた坂田先輩が、慌てて俺の背中から手を伸ばし、ドアを開けてくれた。
静まり返った室内。
一歩足を踏み入れて見渡しても、誰かいる気配がない。どうやら先生もいないらしい。
「そこ、下ろしますね」
「あ、うん。...ありがとう」
保健室内にある、長椅子に先輩をゆっくり下ろし、座らせる。
入学して数ヵ月経つが、保健室なんて入ったのはこれが初めて。未だに立ち入ったことのない教室だってしばしばある。でもまあ、保健室は中学の頃ともさほど変わりはない。
俺は棚などを勝手に漁り、テーピングに必要な物を取り出す。先輩は少し心配そうな面持ちだったが。
まあ、緊急事態だし。
そう心の中で言い訳して、先輩の正面にしゃがんだ。