廊下の先には、俺が今日会いたかった人。
俺と目が合うなり、とびきりの笑顔でこちらに手を振ってくれる彼女。
心臓が跳ねた。
「おお!桐山くん!...ん?」
俺が坂田先輩をおぶっていることに気が付いた先輩は、俺たちに近づきながら目を丸くした。
「華純ちゃんどうしたの?」
「星乃...ちょっと椅子から落ちちゃって」
「え!?大丈夫なの?」
心配そうな表情で駆け寄る、鈴森先輩。
今さらだけど、先輩はこの状況を見てどう思うだろうか。...どうも思わないか。先輩の中の俺なんて、後輩Aみたいなものなんだろうから。
誤解されたくないとか。思っても。
こんな悪い方へばかり考えてしまう自分。心底嫌になる。
「うん。今から保健室行ってくる」
「そっか、お大事にね!」
「ありがと」
ふたりの会話が一段落したところで、鈴森先輩が部室へと向かっていく。
その背中を一瞬だけ見て、保健室へと向かった。