「え...っ、いいよ本当に!」


「遠慮される方が困ります」



抵抗する先輩に、俺は一歩も引かずに乗るよう促す。俺だって、おんぶなんてする柄じゃないし恥ずかしい。

でも、誰にだって手を差し伸べる鈴森先輩の優しさを見てたら。

なんか、移ってきてんだ。



「...、ほんとごめんね」



俺の押しに負けて、本当に申し訳なさそうに、躊躇いがちに彼女の手が俺の肩に触れた。



「っ!」


「痛みますか?」


「だ、だいじょうぶ...」


「坂田先輩の"大丈夫"は信用できないんですけど」


「や、ほんと!とりあえず恥ずかしいから早く保健室行こう!」



しっかり掴まったのを確認し、立ち上がる。あまりの軽さに、少し心配になった。本人は重いから、なんて言うけれど。



準備室を出て、部室内には部員が既に活動をしていた。部長に事情を説明して、部員たちの視線を浴びながら、教室を出た。


...そこにまだ、鈴森先輩はいなくて。



まだ姿を見れていないことを残念に思いながら、廊下を歩いていたとき。




「......あ」