ああ、それで。
そのためにこんな目に遭って、とんだ災難だな。
「そうだったんですか」
納得しながら、陶芸品の入ったダンボールを慎重に棚へと戻した。
そして先輩の方を振り向き、見下ろす。そこで、ふとあることに気が付く。いや、その前からも思っていたが。
「...先輩、立てないんですよね」
見上げる顔が、驚きへと変わる。
隠しているつもりだったんだろうけど、ずっと立たずにそうやって座り込んでいたら、誰だって気が付く。椅子から落ちた衝撃で、足を捻ったのかもしれない。
...たぶん、迷惑かけただとか、思ってるんだろうな。
ずっと黙って気まずそうに、言い訳を考えているのが丸わかりだ。その態度が既に肯定を意味しているのに。
相手が怪我していると解って見放して行くほど、俺は邪曲な人間ではない。
「...え、」
「乗って」
俺は彼女の前にしゃがみ込み、背中を向けた。