恥ずかしさをごまかすように笑う先輩。
先輩の指す棚は、彼女の身長では到底届かないところにあって、椅子に乗ったってあの大きさのダンボールを下ろすのは無理があるだろう。
鈴森先輩よりは身長は高いけれど、女だし。
落ち着いてから見れば、先輩の後ろに椅子が倒れていた。音がしたのは、この椅子の倒れた音だったんだろう。
「...こういうのは男に任せるもんすよ」
立ち上がって棚へと手を伸ばす。
確かにダンボールは女性の力では持てないような重さ。難なくそれを床へと置き、その奥にある箱を出した。それは軽かった。
「これで合ってますか?」
「あ...うん、ありがとう」
2つの箱の中身を覗くと、重い方は誰か卒業生が作ったのだろうと思われる陶芸品。道理で重いわけだ。
もうひとつの方は、たくさんの種類の布やリボンなどだった。
「...何に使うんですか?」
不思議に思って訊くと、先輩はふっと笑った。
「ああ、ただの参考だよ。布の皺とか再現したくて」