「なあ、さっきホームルームで言ってたやつだけどさ、もう決まってるか?」
...さっき?
何か、言ってたんだろうか。音楽流して突っ伏してたから、そういえば今日担任の姿も見ていない。気が付けば駿にイヤホンを取られていたから、いつホームルームが始まっていつ終わったのかさえも記憶にない。
怪訝な顔の俺を見て、駿は力が抜けたように言う。
「ああ...泰生。お前また話聞いてなかったのか」
自分でも自覚してはいるが、俺は人の話を聞いていないことがほとんどである。
「...何て言ってた?」
肯定の言葉は省いて、そう訊く。
駿は呆れたように、やっぱりな、と言った。そう言いながらもいつも教えてくれるのが、俺にとってありがたい。なんて、絶対口に出してやんねぇけど。
「仮入部だよ。来週からあるじゃん」
「....」
「まさか仮入部の存在も知らなかったのか?」
「...ごめん」
いくらなんでも、聞かなさすぎだ。
自分でも思う。
申し訳なくなって謝ると、駿は苦笑いした。