教室に足を踏み入れて、真っ先に駿がこちらへ急ぎ足でやって来た。



「おい泰生!靴箱んとこの貼り出し見たかよ!?」



朝から元気がいいのはいつものことだが、今日はやけに興奮気味だと思えば、その話題か。



「ああ、見たよ」


「あの人1位って...!」



駿も見ていたのか。こいつは自分が載っていないと解っていても見に行くような野次馬タイプだから、納得はいくけれど。


これでまた先輩を知る人が増えるのだと思うと複雑、だったり。



なんて言えるほど、自分の立ち位置は高くないのに。



「...俺も驚いた。なんか、」



言いかけて、その言葉を飲み込む。

駿はいきなり話すのを止めた俺に、不思議そうな顔をした。



「なんか、何だよ?」


「...なんでもない」


「え、気になるじゃねぇかよ」


「気にすんな」


「ええ....」



駿は残念そうにしながらも、無理に訊こうとはしてこなかった。こいつなりの優しさだ。

心の中で、謝った。



..."遠く感じる"だなんて。


口に出したらもうそこから動けない気がして、言えなかったんだ。