「え、わたしたちこんなに家近かったの?」


「...俺もびっくりです...」



こんなに近かったのに、気が付かなかっただなんて。帰り道だとか、気づけるときはたくさんあったはずなのに。

お互いに驚いた顔で見つめ合う。足は、止まっていた。



「この近さだったら、中学どころか小学校も一緒?」



半笑いでそう言う先輩。

それに俺は、あ、と言って訂正を加える。



「いえ。俺、中学入学と同時に引っ越して来たんです」


「そうだったの?」


「はい。だから小学校は違います」


「そういえば家建ってたな...」



家が建っていたことは知っていたのか。誰が引っ越してきただとかは、ここのマンションまでは聞くことはない。だから知らないのは当たり前だ。


...まあ、この機会に知れて良かったのかな。


でないとたぶん、ずっと知らないままだっただろうから。