「はい、あと5分くらい...」
俺の家は、駅から15分ほど歩いたところにある普通の一軒家。
でも今日は、既に15分以上経っている。先輩の歩くペースに合わせている、というのもあるが、俺が少しでも長くとなりにいてほしくてゆっくり歩いていたり。自分勝手な、考え。
自分の女々しさに嫌悪を抱いた。
そんなとき、曲がり角を曲がって、我が家が見えてきた。
「あ、俺の家あれです」
指を指してそう言うと、彼女はまた、驚いた表情。その反応に、俺もまた驚く。どうしたのだろうと思い、訊こうとしたとき、先に先輩の指が動いた。
「わたしの家、その手前のマンションだよ」
「......え」
俺の家は普通の住宅街に位置する。
今の地点は少し家まで遠い。その手前には、いくつかマンションが点在している。
そこが、先輩の、家?
俺たちはふたり、顔を見合わせた。