お互いの家を知らないから、どこで別れるのかわからない。とりあえず、自分の家の方向を指差すと、指す方向は同じ。
それにちょっと安堵した。
もう少し、一緒にいられるんだ、って。
肩を並べて歩き出す。先輩が俺を見上げる。その笑顔に心臓は跳ね上がった。
先輩は、よくしゃべる。
俺は人見知りするというのもあるが、自分から話題を考えたりするのが苦手だ。気を遣わないような人なら大丈夫だけど、あまり面識のない人の前では、もし沈黙したりなんてしたら、どう対応していいのかわからなくなる。
先輩はたぶん、そういった心配もなく、何も気にせずに話しているんだろう。
それが俺にとっては楽だった。
「...そういえばさあ、ずっと方向一緒なんだけど、桐山くんの家もこの辺りなの?」
ふとそう問われて、思う。
確かにさっきから、ずっと歩く方向は同じ。曲がり角も全部。俺が合わせてるとか、そんな気持ちわるいことは決してしてない。偶然だ。