「たーいーせーい!」
ぷつ、と誰かの手によってイヤホンが外される。朝にそぐわない邦楽ロックが途切れ、ざわめく教室内の音が鼓膜を揺らす。
もう少しでサビだったというのに、タイミングが悪いな。
むくりと顔を起こし、イヤホンを引っ張った張本人を睨んだ。
「.....なに」
だけど効果はなくて、そいつはヘラヘラと笑っている。心底気持ちが悪い。心の中で奴を罵倒しながら、大音量で流していた曲を中途半端なところで停止させた。
「そんなに怒んなよ、な?」
「........」
他人とあまり深い関係を築かない俺。
それを周囲も解っているのだろうか、そんな俺に自ら関わろうとしてくる奴はそう居ない。
...なのに、この目の前にいる、高原駿は例外で。
中学が一緒だったのだが、俺がどれだけ適当にあしらっても引かなくて、懲りずに俺に話しかけてくる、変わり者だ。
それを受け入れてんのは俺なんだけど。
駿の手から、イヤホンを奪い取り、無造作にそれとスマホをかばんの中に放り込んだ。