下駄箱で靴を履き替え、先輩が口を開く。
「桐山くんは何通学?」
「あ、電車です」
「駅って、すぐそこのとこ?」
「はい」
「じゃあ駅まで一緒だ」
...え。
先輩も、電車通学だったのか。というか...駅まで、一緒って。まさかふたりで帰れるだなんて。こんな嬉しいことあるのか。
心の中でガッツポーズ。
前までの冷めてた俺の世界を、先輩が色づけてくれてるみたいだ。
色のなかった、モノクロの毎日。それが今では、一気に色鮮やかになっていく。俺が変わったことは、俺自身実感している。俺の中にまだ、こんな感情があったのだ。
笑顔で話している先輩の話を、相槌を打ちながら聞く。
...駿には、いつから好きだか覚えていないと言った。曖昧だったのは、確か。今も曖昧だけど、たぶん。
初めて見た、その時から。
真剣に絵を描くその横顔に、
惚れていたんだと思う。
それから知っていく先輩の笑顔、内面、明るさ。それらを知って、想いは募っていくのだ。