「...くん。桐山くん」
名前を呼ばれて、はっとする。すぐ隣に鈴森先輩がいて、態度には出さずに驚く。無条件に心臓の音は早まる。
「すいません、気づかなくて」
「いいよー。すごい集中力だね」
ふと時計を見ると、最終下校まで残り5分もない。絵を描いていると本当に時間感覚が狂ってしまう。もうこんなに時間が経っていたのか。
部室内には、俺と鈴森先輩しかいない。
「...もう、みんな帰ったんですか?」
「んー?うん、でも鍵は顧問の先生がいつもかけてくれるから」
そうだったのか。部員の誰かが鍵をかけて、職員室に持っていくものだと思っていた。違ったんだな。
なんて思いながら、急いで帰り支度をする。
「できたー?電気消すよ?」
「あ、はい。すみません」
俺が先輩のところへ小走りで行くと、先輩が電気を消した。そしてふたり、下駄箱へと向かって歩き出す。
...これは、一緒に帰れるとかそういう?
思わぬ展開に、心拍数はまた上がった。