ここの美術部は、画材や描くジャンルに特に決まりはない。だが、ほとんどは油彩。たまに水彩も用いられている。それ以外はイラストなどを頼まれない限りはあまり使用しない。
顧問は基本来ない。みんなそれぞれ好きに絵を描いている感じだ。
自由に描いていいと言われても、最初のうちだからか戸惑う。
悩んだ末に、仮入部期間中に何枚か描かせてもらった静物画の中から1枚選んで、それをキャンバスに拡大し、色を塗ることにした。
それくらいしか思いつかなかったのだ。
下書きは終わり、昨日から色塗りに入ったところ。
油彩は今まで使ったことがなかったから、鈴森先輩に使い方を教えてもらった。
その時の、先輩の近さといったら、もう。
思い出すだけでも恥ずかしくなる。先輩は何も思ってなんていないのに、自分1人だけ意識していて。
説明を聞かなければならないのに、集中できなかった。
...とか、どこの中坊だよ。
考えるのをやめて、パレットに必要な分だけ絵具をだし、溶き油で調整していく。良い具合になって、キャンバスに絵具を乗せていく。
絵を描くのは、好きだ。
自分だけの世界に浸ることができるから。
そうして集中するとまた、周りの音が聞こえなるのだ。