...入部する前、会ったときからずっと思っていたけど、このふたり、仲良いよな。
ああ、俺、心狭すぎ。
仲がいいのなんて、同じ部活で1年も過ごしてきたんだから当たり前。それに、鈴森先輩は誰に対する態度も大差がない。誰とでも仲良く打ち解けられるのだ。俺もそのうちのひとり。だから、校内で見かけたときも、先輩の周りには沢山の人がいる。
あれだけ美人でモテていれば、僻みだってあるのだろうと思っていた。
でも、あの人柄の良さから彼女を嫌う人はそう居ないらしい。そんな気さくなところも、魅力のひとつなのだ。
筆などを用意しながら、先輩を見てしまう自分。
はあ、と誰にも聞こえないくらいの音量でため息を吐いた。...つもりだったのだが。
「どうしたの?」
「っ!...こ、こんにちは」
...びっくりした。
背後から俺に声をかけたのは、2年部員の坂田華純。
なんでもない、と伝えると彼女は不思議そうな顔をしながら自分の描きかけのキャンバスへと向かっていった。
他の先輩方も同じように、自分たちの絵を描き始めていた。
俺もそれに続いて、筆を持った。