「お前って...恋知ってたんだな」


「...まあ人間だからな」



たぶん、自然な感情。きっと以前の俺なら絶対に抱くことはなかっただろう。


漸く落ち着きを取り戻した駿が、いつもより少し小さなトーンで話し出す。



「いつから好きだったんだよ?」


「んー...わかんね。最近ってことは確かだけどな。気づいたら目で追ってた感じ」



仮入部体験、俺は最後の1日まで美術部へと足を運んだ。


俺と同じ見学者は、何人か居た。少なかったけれど。そいつらにも同じ表情を見せる先輩に、何故だか苛ついたり。

絵を描いていても、視界に先輩を映してしまっていたり。



そんなわけのわからない感情を経て、やっと、好きなんだということに気が付いたのだ。



思い出していると、隣で駿はまるで恋バナ好きの女子のようにキャーキャー言っている。

俺のこんな姿が、珍しくて興奮しているらしい。俺だって、ちゃんと人を好きになれるのに、失礼な。そんな風に思われるような態度取ってたのは自分だけど。



駿が変わったと思ったのは、鈴森先輩が俺を変えたからだ。