怪訝そうに、俺は訊き返す。だけど、内心はどきりとしていた。変な汗が出てくる。



「なーんか、なんて言うかなあ。雰囲気が柔らかかったというか...いつもは何に対しても冷たい感じだったのに、違ったんだよ」



いい日本語が見つからない、とこめかみに手をあてて呻く駿。もう、今の俺を指す言葉にするなら充分すぎるだろうと思う。それでも駿は納得していない様子で、俺は何も言わない。

変な動悸がする中、そんな俺を知ってか知らずか、とどめを刺した。



「...好きなのか?あの先輩のこと」


「..........」



黙りこくって否定もしない俺に、駿は目を剥いて驚いた。



「え、ええええええ!?まじで!?」



そんな反応をされるだろうとは思っていたが、まあ恥ずかしい。

紛らすために髪の後ろを掻いた。



......好き。

誰かを、好きだと思う感情。



その対象が、俺にとっては鈴森先輩なのだ。