「おはよう!校舎内で会うの初めてだねえ」


「おはようございます。そうですね」


「次移動なの?」


「はい、化学室に」


「そっかそっか。化学室って2年の校舎側だもんね。がんばってね」


「ありがとうございます」



終始口元は笑みを浮かべて、隣で俺たちの会話が終わるのを待ってくれていたんだろう彼女の友だちと、歩いて行った。そして俺たちも、歩き出す。

しかし、隣からくる視線がうざったい。



「...何だよ」



うざい、と付け加えてそいつの額を遠ざけてみるも、効果はなし。

怯むどころか、駿は目をキラキラ輝かせて、俺を問い詰める。前のめりなそいつに、俺は引き気味に仰け反った。



「...おい、泰生。誰だよ今の美女!聞いてないぞ!」


「なんでお前に言う必要が...ただの部活の先輩だよ」


「先輩!?」



俺のひとことに、そいつは更に声を荒げる。



「まじで?いいなあ!めっちゃ可愛かったじゃん!」



そんな、心底気持ち悪いことを言った駿に、俺は思わず苦笑いしてしまった。